琥珀は古くは呪術の道具に使われたり、蚊よけに使われたりしました。また癒やしの効果があるとしてロシアのサナトリウムでは治療に利用されています。
もちろん宝石としても以前から人気の琥珀ですが特に映画『ジュラシックパーク』で世界中の人々の興味が高まりました。
ご存知の人も多いと思いますが、『ジュラシックパーク』は琥珀に閉じ込められた恐竜の血液を吸った蚊から恐竜のDNAを抽出し恐竜を蘇らせるというSFエンターテイメントの傑作です。
ただ、実際には今のところジュラ紀の琥珀からは虫の内包物は見つかっていません。
また、日本では2013年の4月から放送され大ヒットしたNHKの朝ドラ『あまちゃん』が日本最大の琥珀の産地、久慈を舞台として放映されました。
ドラマの中で琥珀についても紹介されたので久慈の琥珀を知る人が増えました。
琥珀とは?
『ジュラシックパーク』や『あまちゃん』で琥珀が話題になったとは言えそれでも琥珀について詳しく答えられる人は少ないと思います。そこで簡単に「琥珀とはなんぞや?」について解説しておきます。
琥珀とは一言で言えば木の樹脂が地中に埋没して何千万年もかけて固化した宝石です。樹脂が長い年月をかけ水分などの揮発成分が全て抜け重合化が進みコレ以上変化が起こらない状態のものを琥珀と呼びます。
琥珀になる途上のものをコーパルと呼びコーパルは琥珀に比べ柔らかく傷もつきやすく溶解温度も低いのが特徴です。
木の種類はかつては松柏類と言われていましたが松脂などはどんなに時間が経過しようとも琥珀にならないことが分かってきました。
琥珀になることのできる樹脂のなかには「ジテルペン」という成分を含んでいる必要があるのです。
ナンヨウスギ科の「アラウカリア」やマメ科の「ヒメエア」などが琥珀になりうる樹液を出す木として知られています。
琥珀の偽物の見分け方
見分け方のひとつとして内包物により見分ける方法があります。内包物にハエがある場合琥珀の場合その触覚は長いことが多いです。
もし内包物のハエの触覚が短かった時はコーパルである可能性が高くなります。琥珀は何千年も前の木の樹脂から出来ているのでその内包物の虫も現在の虫と大きく異なることが多いのです。
もちろん進化しないまま生き延びた「生きた化石」といわれるものもあるので100%とは言えません。
また、コーパルは年代が新しいだけではなく融点も琥珀よりも低いので後から虫を人為的に混入させることも容易なのです。
セルロイドやプラスチックで作られた偽物もあります。これらはかなり精巧に作られているので見た目だけで見分けるのはかなり困難です。
琥珀とコーパルの違い
琥珀はアルコールにもほとんど溶けないがコーパルの場合は純度の高いアルコールを付けると表面が溶け出します。
ただし、この検査方法ですと手持ちのアクセサリーが損傷する恐れがあります。
飽和食塩水を使って浮くかどうかでの判別
20℃の飽和食塩水では比重の関係でコーパルは浮かび琥珀は水中に彷徨いプラスチック、ガラスは沈みます。ただし、プラスチックでもポリエチレンは浮きます。
このように琥珀の鑑別は個人でもある程度は可能ですが完璧とはいえず大事なアクセサリーに傷をつけてしまうリスクもあるので結局は信頼できるショップで購入することが一番です。
琥珀の産地
琥珀は全国で産出されますが、取れる量は限られています。商用として出回っているものの多くはバルト海沿岸地域やドミニカ共和国のものです。
日本では岩手県久慈市が有名ですが、全国的に見ると産出量は少ないです。大ヒットした朝ドラ『あまちゃん』の舞台ということもあり一躍有名になりました。
余談ですがフジテレビの久慈暁子アナウンサーは岩手県出身です。ただし、久慈市ではなく奥州市です。ちなみに大谷翔平も奥州市です。
宝飾品以外としての琥珀の活用例
琥珀は装飾品として以外でも様々な目的で利用されてきました。
医学の基礎を作り「医学の祖」と呼ばれている古代ギリシャの医学者ヒポクラテスは「琥珀のビーズを身に着けていると頭の疲れや喉の痛みが和らぎ、たしかに体の調整に聞くようだ」と言っています。
中国で書かれた百科事典『千金翼方』によると琥珀には精神を落ち着かせる作用と利尿作用があると書かれています。
また、久慈で琥珀は燻陸香(くんのこ)と呼ばれ香料や蚊遣りとして使われていました。戦時中には船舶の底に塗り錆止めとしても使用されていました。
このように琥珀は装飾品以外でも様々な利用価値のある貴重な宝石です。
名前の由来
琥珀という文字の由来は漢字ということもあり中国発祥です。
古代中国では虎は神格化された生き物で死ぬと地中に潜って人間を守り続けると信じられていました。
王偏は玉偏とも呼ばれ3つの玉を縦紐で通した象形文字で宝石のことを表します。